SINCE 1993(11)

2024/07/20
オガサワラヒロユキ

高校3年生。おそらく6月頃のこと。
高校の帰り道にある小さな書店で音楽雑誌を立ち読みしていた。ぼんやりとディスクレビューを眺めていると、ある日本のバンドのニューアルバムについてレビューが書かれていた。そこには、このバンドは全曲英詞で歌っていて、”CUT”と言う曲を聴くためだけにでもこのアルバムを買う価値がある、とあった。男性が1人で映っているジャケットが印象的だった。
人並みに受験勉強を始めつつあった僕は、緑地公園にある予備校に通っていた。高校のある駅からJR学研都市線で京橋、京橋から地下鉄長堀鶴見緑地線で心斎橋、心斎橋から御堂筋線~北大阪急行で緑地公園と言うルート。そして、心斎橋で降りた時に、 結構な確率で OPAに行きHMVでCDを物色していた。そしてある日、上で書いた「 男性が1人で映っているジャケット」のCDが心斎橋HMVで面出しされて置いてあった。それが、PEALOUTのTHE UNKNOWN PLACEだった。何となく吸い寄せられるようにして購入。(ちなみに、一緒に買ったのがDRAGON ASHのPUBLIC GARDENだった。)
上で書いた”CUT”と言うのはこの曲。今思えば決してPEALOUTの代表曲と言う訳ではないのだが。

家に帰ってアルバムを聴いたのだけど、正直、初めて聴いたときはハマらなかった。ただ、 当時、心斎橋にあった クラブクアトロでワンマンがあるようで、そのチケットが非常に安かった。(クアトロなのに確か3,000円いかなかったと思う。)受験勉強の気晴らしに行ってみるか、とチケットを購入。1人でライブを見に行った。PEALOUTのオフィシャルで日付を確認すると、1998年7月28日のこと。(26年前・・・)
もしも、自分に「人生を変えた経験」的なものがあったとすると、この日はそうだったのかもしれない。それまでにもクアトロには何度か行ったことがあったが、この日はその中でも一番お客さんが少なかった気がする。率直に言うと結構ガラガラだった記憶がある。そんな中、ライブはアコースティックセットから始まった。ギターロックバンドを想像していたのにいきなり肩透かしを食らう。その後、エレクトリックセットが始まり、演奏がどんどん熱を帯びて来る。お客さんは少ないけれど、そんなことは関係ないと言わんばかりのテンション。この日、一番印象的だった曲が”GOD KNOWS I’M PROBABLY A SIN”。この曲はインディーズの1stに入っているのだけど、当時の僕は音源を持っていなかったし聴いたこともなかった。しかし、この曲における近藤さんのまさに血管が切れそうなパフォーマンスに完全に圧倒されてしまい、僕は茫然とライブを見ていた。そう、確か結構みんな棒立ちでライブを見ていたような記憶がある。(この曲。ライブ動画が上がっているのが嬉しい。後にCDで音源を聴いて「あの時の曲だ」となるくらいにインパクトがあった。)

本編が終わりメンバーがはけた合間に、客の1人が「アイドル見に来てるんちゃうぞ、こんなもんちゃうやろ」的なことを言って他の客を煽る。そしてアンコールでは、前の方で大暴れして終了。(僕も参加した)オフィシャルでセットリストを見たらSTANDとWEAPONと言うハードコアチューンだった。
文章力の無さ故に凄さが伝えられないのがもどかしいが、これは凄いものを見た・・・と思った。今でも自分の中でのベストライブの一つだと思う。
そして終演後、一人の線の細い男性に声をかけられた。「ライター貸してくれへん?」とかそんな用件で。末吉さんと言う人だった。話しているとバンドメンバーを募集しているとのこと。初めて会ったのになぜか、よかったら一緒にやらへん?と言う話にまでなり、彼はマイブラが好きだと言う。 マイブラって誰?当時の僕はMy Bloody Valentineを知らなかった。翌週、件のHMVで”You Made Me Realize”のシングルを購入。 単純に高校生でお金がないのでシングルを買ったのだが、このシングル、後に一時期プレミア価格が付いていたような。


インターネットも普及していない時代に、色々調べると(きっと、その労力は受験勉強に充てられるべきだった)どうもマイブラと言うバンドはシューゲイザーというジャンルらしいぞ、と。PEALOUTの虜になり、シューゲイザーと言うものを知った高校3年生の夏だった。

~つづく~