Since 1993(6)

2013/11/26
オガサワラヒロユキ

MTRを購入してからというもの、HR/HMの名曲を一人で多重録音して再現すると言う訳のわからないことをしばらくしていたが、やがてそれにも飽きてしまった。

高校1年生の終わり。家に電話がかかってくる。中学時代の友人、有馬からであった。「オガ(当時、こう呼ばれていた)、バンド組もうぜ」と。彼は、進学した高校で「無免許医師団」と言うハードコアバンドをやっていた。彼はフォークソング部に所属していたのだが、そこには「エレキを使ってはいけない」と言うルールがあった。一度、演奏会を見に行ったことがあるのだけど、エレアコにディストーションを繋いでS.O.Bやヌンチャク等のコピーをすると言う法の抜け穴をつくような奇妙なクラブだった。



「無免許医師団」はVo&Guの唯くん率いる界隈では人気のバンドだった。唯くんは鋭い眼光が印象的なとてもカリスマティックな人物で、高校生にしてオリジナルチューニングを開発したり、その文学的な歌詞と激しいサウンドは(今思えば)Eastern Youthを髣髴とさせるような部分もあったと思う。一方でM&Cと言う下ネタソングもあったが。(MとCが何を指すのかは想像にお任せする。)
構成はVo&Gu、Gu、Ba、Ba、Dr。つまりツインギターツインベース。有馬はツインベースの目立たない方の片割れで「自分が目立つバンドを組みたい」と言う動機で僕を誘ったのだった。中学時代へヴィメタルに熱中したみんなは少しずつ別の道を歩み始めていた。その多くがハードコアやメロコアに移行していったのである。

有馬が呼びかけたバンドの初顔合わせは、例の枚方青少年センターのスタジオ。メンバーはボーカルのいもこ(中学の同級生、男)、ベースが有馬、ギターが僕、ドラムが有馬と同じ高校のてつこ(男)だった。このバンドは、先の無免許医師団の唯くんが「SUCK」と命名してくれた。(もちろんジャカランタン企画による名物イベント「SUCK」とは別物)

僕は相変わらず、メタル少年だった。SUCK結成の頃は「王者」Yngwie Malmsteenのコピーをしていた。しかし、その中で徐々にメタルに疑問を抱き始めていた。Yngwie Malmsteenと言えばギターの早弾きで有名だが、ギターソロでは16連符が4つ続く、なんてことがざらにある。もちろん難しくて弾けない。それ以上に音数が多すぎて覚えるのが大変なのである。写経する修行僧のような気持ちでギターを弾いていたような気がする。

一方で、メロコアと言うのは比較的簡単だったし、誘われるままに「SUCK」のメンバーでメロコア(具体的にはHi-STANDARD)のコピーを始めたのだった。

そんな中、僕は高校2年生になり、17歳になっていた。

SUCK初ライブは、京阪電鉄の古川橋駅近くの大東楽器に併設されていたウッドペッカーと言うライブハウス。これが初ライブハウスデビューだった。確か、Hi-STANDARDに加え、NIRVANA、FOO FIGHTERSのコピーをやったと思う。ぜんぜんお客さんもいなかったし、ちっとも受けなかった。でも一人前にビデオ撮影なんかしていて、みんなで見返した。TVに映る僕らはHi-STANDARDの「The Sound Of Secret Mind」と言うとてもいい曲をやっていた。

その曲の中にある「What are you waiting for? Can’t you hear the sound?」と言う歌詞がどう聞いてもなぜか「わきわきどぅーわきわきぼー」としか聞こえなかった。何とも微妙な空気の中、有馬の「いもこ、わかってんな?」の一言でボーカルのいもこはその1回のライブで「SUCK」をクビになったのだった。

~つづく~